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乳房に心配のある方・異常を感じる方|患者さんへ

乳房に心配のある方、しこりなどの異常を感じる方

乳房に以下のような症状のある方はできるだけ早く乳腺を専門とした病院を受診しましょう。

  • しこりのある方
  • 検診のマンモグラフィ検査で異常(しこりや石灰化など)を指摘された方
  • 異常な乳汁分泌のある方
  • 乳房の皮膚が赤い方
  • 乳頭の皮膚がただれている方
  • わきの下にしこりがある方
  • それ以外の症状でも、これまでとは違うこと
    はっきりとした症状はなくても乳房の違和感など、心配なことがある場合も同様です。

ここからは乳腺の診療についてご説明します。

症状がある≠乳がん

まず乳腺を専門とする病院を受診しましょう。本当に今の症状が異常なのか、異常がある場合はそれが乳がんによるものなのかを判断する必要があります。
何らかの症状があるからといって、その全てが乳がんであるとは限りません。がんかもしれないと心配しながら日々を過ごすよりも、早めにその症状について診断し、原因を知りましょう。

診断の流れ

1.問診 → 2.視触診 → 3.検査
と進みます。

検査法には以下のように様々なものがあります。

◆ 検査法

◇画像検査
マンモグラフィ検査 / 乳腺超音波検査 / 乳房MRI検査 / CT検査 / PET検査 / 乳管造影検査

◇細胞診・組織診
穿刺吸引細胞診 / 組織診(吸引乳房組織生検(マンモトーム生検)または針生検)

◇乳汁検査 (乳頭分泌がある場合)
乳汁分泌細胞診検査 / 乳頭分泌液CEA測定

最初からこれらの検査をすべて受けなければならないわけではありません。病状などにより、必要と思われる検査を適宜受けていただくことになります。通常、この中のいくつかの検査を行い、その結果をもとに診断を確定していきます。

視触診、画像検査と病理検査を組み合わせて診断する

(写真:乳腺超音波検査機器) 診断は非侵襲的な方法(体に傷をつけず、体の表面から診察・検査する方法)からはじめて、最終的には侵襲的な方法(体に傷をつけ、細胞や組織を採取して顕微鏡で検査する)で確定診断をします。乳腺の診断をつけるにはいろいろな検査を組み合わせることが重要です。

順序としては問診、視触診ののち、マンモグラフィ検査乳房超音波検査による検査を行い、乳房に異常が存在するのかどうかの判断を行います。その後、さらに詳細に調べる必要があれば乳房MRI検査などを行います。ここまでは非侵襲的な検査です。

さらに、乳がんやその他の悪性病変が疑われる場合、良悪性の判定が困難な場合には、乳腺穿刺細胞診、組織診等の検査を行い、良性か悪性かの質的診断を行います。これらは侵襲的な方法になります。
病理検査の役割は非常に重要です。なぜなら、病変を直接見て診断するからです。
病理検査でよく用いられるのが乳腺穿刺吸引細胞診組織診ですが、どちらも長所と短所がありますので、適宜使い分けます。
診断を確定するためには、腫瘍の組織をきちんととる、生検することが大切です。
京大病院では組織生検を行う際、主に吸引乳房組織生検(マンモトーム生検)を行っています。超音波でみながら、あるいは超音波で見えない病変の場合はマンモグラフィ画像を撮影しながら、マンモトームという機器を用いて組織の採取を行っています。診断に十分な組織量を採取し、なるべく一度の検査で病理検査を行うためです。

画像検査について

◆ マンモグラフィ検査について

マンモグラフィ検査は、乳房を平行な二枚の板で圧迫し、X線を用いて写真を撮る検査です。通常は、左右2方向、合計4回撮影します。強い圧迫を行いますが、そのことにより乳がんの検出能が上昇し、被曝も少なくなります。ペースメーカー術後や、豊胸術後の方は基本的に撮影を行いませんので、検査前に申し出て下さい。
過去の研究から、マンモグラフィ検査では触診で分からない乳がんを多数発見でき、50代以上のマンモグラフィ検診で乳がん死が減少することが分かっています。
乳房は個人差、年齢差が大きい臓器ですが、マンモグラフィ検査の乳がん検出能も乳房の状態に大きく影響を受けます。特に若年者や乳腺密度の高い人は検出能が下がるため、他の検査と合わせた評価が重要となってきます。

◆ 京大病院のマンモグラフィ検査の特色

MMG 小さな乳がんを見逃さないためには精度管理が重要です。当院は日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)の施設認定(A)を受けており、精中機構の技術講習会を受講した女性放射線技師が撮像し、読影講習会を受講した医師が読影しています。
当院では2014年よりトモシンセシスが撮影可能なデジタルマンモグラフィ (Selenia Dimensions, Hitachi)を導入しました。トモシンセシスでは、X線の角度を変えて複数データをとることにより、薄切りの画像が作成されます。乳腺密度の濃い人などで重なりにより見えなかった乳がんを明瞭に描出し、逆に乳がんと紛らわしかった正常構造を区別することにより診断能の向上が期待できます。

◇トモシンセシスの被曝について
通常の撮影に引き続きトモシンセシスを撮影した場合の吸収線量は約2.4mGy(ミリグレイ)です。機器更新以前の1回の撮影は約2.0mGy(ミリグレイ)でしたので、二種類撮影しても被曝低減技術により1.2倍程度に抑えられています。またマンモグラフィ検査での推奨被曝限度3.0mGyよりも低い値となっています。
実効線量は2.4(mGy)x 2(方向)x 0.12(乳腺の組織荷重係数)で0.58mSv(ミリシーベルト)となります。公衆の被曝限度が1.0mSv、自然での放射線被曝が2.4mSv程度ですのでそれらより少ない値です。

PAM ◇光超音波マンモグラフィの臨床研究
光超音波マンモグラフィとは、乳房に光をあてた時に発生する超音波を捉え、画像化する装置のことです。当科では、痛みや被曝のない、低ストレスの乳房検査装置の実用化を目指して、光超音波マンモグラフィを用いた臨床研究を行っています。本研究は、キヤノン株式会社との共同研究です。

◆ MRI検査について

MRI ◇一般論
ここ数年で乳房MRI検査は飛躍的に普及しています。最大の特徴は乳がん検出感度が他の画像検査よりも高いところです。乳がんの広がりの精査や、他の検査で診断困難な症例、術前薬物療法の効果判定、術後の再発精査、乳房インプラントの評価などで検査を行います。欧米などでは、ハイリスク(生涯乳がんリスク20%以上)と判断された方の検診にも用いられています。
MRIでは強い磁石の中に入るため、体内金属、植え込み機器、入れ墨で問題が生じることがありますので、該当する場合主治医に伝えて下さい。
基本的にガドリニウム造影剤を腕の静脈から注射して検査を行います。腎機能が悪い方、喘息のある方、造影剤に対してアレルギーがある方は造影剤が使用できない場合がありますので、主治医に伝えて下さい。

◆ 京大病院のMRI検査の特色

乳房MRI検査は機器の性能が大きく画質に影響しますが、当院では3.0 Tesla MRI の Magnetom Trio Tim (Siemens)と、16chコイルを用いており、短時間で高分解能の画像が撮像できています。撮像は欧米でのガイドライン(EUSOBI)に従っており、乳房MRIを専門とする放射線診断医が読影、診断を行っています。年間の症例は500例弱で、レポート作成後も、放射線診断医、乳腺外科医、病理診断医がカンファレンスを行いながら症例検討を行っています。

◇臨床研究について
当院は診療と並行してMRIを用いた臨床研究も行っており、倫理委員会の承認の元、個人情報保護に十分配慮して行っています。新しい撮影法を追加(大体5分程度)して既存の撮影法と比較を行う場合、検査室で研究の説明を行うことがあります。研究を拒否することも可能で、そのことにより診療上の不利益を被ることはありません。詳しくはリンク(PDF)を参照下さい。

生検について

◆ 穿刺吸引細胞診

穿刺吸引細胞診 採血に用いる程度の細い針で乳房のしこりやリンパ節を刺し、吸引して細胞を取る方法です。取った細胞はスライドガラスに吹き付け、顕微鏡で観察します。針生検よりも細い針を用いますので、痛みや出血はやや少なく済みます。ただしこの検査方法では細胞がばらばらになり、どんな構造を取っていたかわからなくなること、取れる細胞の量が少ないことなどから、良性か悪性かを判断することはできますが、針生検による診断よりも情報が少なく、悪性であった場合はさらに詳しい情報が必要となり、検査を追加することがほとんどです。

◆ 組織診

いくつかの方法がありますが、患者さんの状況に合わせて、適した方法を担当医から提案します。

◇針生検
細胞診に用いるよりも少し太い針(写真)を用い、超音波で病変を確認しながら数回針で刺し、その組織の一部を採取します。取った組織はそのままホルマリンで固定し、顕微鏡で観察します。この方法ではしこりが良性か悪性かだけではなく、たとえば悪性の乳がんであった場合にはその乳がんの性質など、治療に必要な様々な情報を得ることができますので、とても重要な検査です。外来で行える検査で比較的安全ですが、針を刺して行う検査ですので皮下出血や血腫などが起こることがあります。

◇マンモトーム生検
針生検よりも少し太い針と、組織を吸引する専用の機械を用いて組織を採取する方法です。病変に針を刺すのは基本的に1回ですが、何度か機械で吸引することで十分な量の組織を採取し、顕微鏡で観察します。病変の位置の確認は、針生検と同様に超音波を用いるか(エコーガイド下マンモトーム生検といいます)、もしくはマンモグラフィで指摘された病変で超音波でははっきりと位置がわからない場合は、マンモグラフィ撮影で位置を確認しながら検査を行います(ステレオガイド下マンモトーム生検といいます)。超音波を使って位置を確認する場合、京大病院ではデイサージャリー(日帰り手術室)で行っています。マンモグラフィを使う場合はマンモグラフィ検査の部屋で行います。こちらも皮下出血や血腫などが起こることがあります。

それぞれの検査の針の太さ

乳腺疾患の診断では、複数の専門家で判断することも大切です

診断が困難な症例において最も重要です。
京都大学病院では、乳がんや一部の良性のしこりも含め、病理検査をしたほぼ全ての症例について、毎週、乳腺外科医、放射線画像診断医、病理診断医、放射線技師、病理技師などの複数の領域や職種を超えた人たちが集まり、診断を検討しています。
さらに、同じ症例を複数回にわたり検討することもあります。
複数の専門家が、複数回みることで、より正確な診断が可能になります。

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